マット・リーヴス監督作「猿の惑星: 新世紀」("Dawn of the Planet of the Apes" : 2014)[BD]
知性を獲得したエイプと、絶滅に瀕する人類が、共存の道を探るも、やがて戦争へと向かう様を描くSFアクション作品。
アルツハイマーの画期的な治療薬ALZ-113の作用により、高度な知性を獲得したチンパンジーのシーザーを筆頭にしたエイプの集団が、人類に反旗を翻し、街を抜けだしてから10年が経った。エイプ達はサンフランシスコの山間に集落を作り、シーザーをリーダーとする独自のコミュニティを形成し、徐々にその規模を拡大しつつあった。「エイプは仲間を殺さない」という掟が、彼らの結束を固めていた。一方、人類は猿インフルエンザのパンデミックに見舞われ、世界中で大半の人間が犠牲となった挙句、原発のメルトダウンなどが相次ぎ、文明は崩壊した。僅かに生き残ったのは、猿インフルのウィルスに免疫のあった少数の者達だけだった。彼らは、廃墟と化したサンフランシスコの街中に、コミュニティを作り、細々と生きながらえていたが、燃料が底を突き、今まさに絶滅に瀕している状態だった。
マルコムら6人は、山間部にあるダムを復旧し、発電を試みようと、調査の為にエイプの勢力圏である森に侵入する。ところが1人がエイプに発砲してしまい、集まったエイプ達と一触即発の事態に陥る。しかし、シーザーがマルコム達を追い返す事で、その場を収める。エイプのナンバー2・コバは、人間が弱っている内に滅ぼすべきだと主張する。コバはかつて人間により実験動物とされ、虐待されていた為に、人間に対する激しい憎悪を抱いていた。シーザーは心優しい人間と生活していた為に、人間には同情的であったが、コバの言い分にも理解を示す。シーザーは大群を率いて人間の街に赴き、互いに決して干渉しない事を確認し、二度と森に近づかないように言い放ち、街を後にする。しかし、人間にとってダム発電は最後の望みであり、諦める訳にはいかず、マルコム達は再び森へ入る。一方、街のリーダー・ドレイファスは、エイプの出現に騒然とする人間達を説得する傍ら、密かにフォートポイントの武器庫に格納されている、大量の銃火器の準備作業に入る。コバはその動きを探り、エイプの危機を察知する。
単身、エイプの集落を訪れたマルコムは、シーザーにダムの作業の許可を直訴する。シーザーは銃を全て取り上げる事を条件に許可する。コバはこれに激昂し、シーザーと対立する。シーザーに制圧されたコバは、再び武器庫に戻り、人間からマシンガンを奪う。シーザーの妻が病を患っているのを知った、マルコムのパートナーのエリーは治療を行い、マルコム達はシーザーの信頼を得る。エイプの協力が奏功し、ダム発電が稼働し、電力が復旧すると、マルコム達はシーザーと和解し、喜びを分かち合う。しかし、その直後シーザーは何者かに銃撃され、崖から転落、また、エイプの集落も放火で全焼してしまう。現場には人間による犯行を裏付ける証拠があったが、全てはコバの謀略であった。
シーザー亡き後のエイプのリーダーに収まったコバは、シーザーの息子を焚き付け、武器庫から盗んだ大量の銃火器でエイプ達を武装させ、街に攻め入り、人間達と戦闘を開始する。辛うじてエイプ達の元から逃れたマルコム達は、崖の下で重傷を負ったシーザーを発見する。シーザーは銃撃が人間ではなく、コバによる犯行だと告げる。マルコム達は、シーザーをかつて人間と過ごしたという、現在は廃れきってしまった家に運ぶ。マルコムは手術用の医療器具を探しに、戦闘が繰り広げられている街に侵入すると、そこでシーザーの息子と出会う。マルコムはシーザーが生きている事を伝え、シーザーの元へ息子を案内する。シーザーはエリーに傷の手術をしてもらい、一命を取り留めると、コバに囚われたシーザー派のエイプ達の救出に向かわせる。シーザーの元へ、息子と仲間達が戻ると、マルコムとシーザー達は、エイプと人間の戦闘を止める為に、廃墟と化した地下鉄から街に潜入する。
その頃、コバ率いるエイプ達は、街の中心部にそびえる高層タワーを占拠していたが、ドレイファスはタワーの地下に爆薬を仕掛け、タワーごとエイプを皆殺しにしようと画策していた。シーザーと仲間達はタワーを登り、コバの元へ向かい、マルコムはドレイファスの説得を試みる。タワー上では、手負いのシーザーにコバが容赦なく襲い掛かるが、その最中、ドレイファスは爆薬を点火し、タワーを半壊させる。目的の為なら掟すら破り、仲間を見境なく殺すコバをシーザーは見放し、死闘の末に葬り去る。危ういところで爆発を逃れたマルコムは、ドレイファスが無線で応援要請した軍が、サンフランシスコに向かっている事をシーザーに告げ、戦争を回避する為にエイプ達を連れて街を脱出する様に提案する。しかし、シーザーは、既に戦争は始まり、収拾が付かないところまで来てしまった事を悟っており、逆にマルコムに対し、街から脱出する様に忠告する。マルコムはその言葉通り、シーザーと別れ、街を後にする。シーザーが再びリーダーの座に復帰した事で、エイプ達の結束は強まる。
これは映画館で観てきたので、今回で二度目の鑑賞だが、じっくりと落ち着いて観てみると、物語のディテールなんかも良く理解できて、改めて感慨深い体験をした気分になる。やはり監督マット・リーヴスの成せる業なんだろう。メイキングが1時間以上収録されていたので、ひと通り観てみたが、エイプの映像化に並々ならぬリソースが費やされていて、思わず舌を巻く。85%が外ロケらしく、その中でモーションキャプチャーの演者と、人間の演者が、カットが変わる毎に何度も何度も同じ演技をしたりする。そして、それを後からVFX処理し、全く違和感の無いリアルな映像に作り上げている。CGでありながら、演じているのは人間だから、あの手この手を尽くして、エイプを理解し、全身でエイプ感を体現しようとしているのが凄い。シーザーもさる事ながら、悪役となるコバの残忍で憎悪に満ちた演技が素晴らしく、人間が演じている様にはとても見えなかった。他方、オランウータン好きの僕としては、モーリスが前作から大好きで、相変わらず本物と見紛うばかりのクオリティに、何度も目を丸くした。文句なしに面白い。