チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

嗤う分身

リチャード・アイオアディ監督作「嗤う分身」("The Double" : 2013)[DVD]

ある日、突然現れた自分の分身に人生を横取りされ、居場所を失っていく男の姿を描くブラック・コメディ・スリラー作品。

内気な勤め人のサイモン・ジェームズは、勤続7年にも関わらず、職場では影が薄く、淡々と業務をこなす日々を送る。ある日、サイモンは通勤列車のドアにかばんを挟まれた事で身分証を失ってしまい、出社する度に手続きを踏む憂き目に遭う。会社のトップである大佐の意向で人員削減が進む折、自らを優秀だと証明したいサイモンは業務効率化案を進言するが、上司パパドプロスのサイモンに対する覚えは良くなく、退けられる。その一方、パパドプロスはサイモンを自らの娘メラニーの教育係につける。メラニーはサイモンを小馬鹿にしてあしらう。サイモンは予てから複写室で働くハナに惹かれており、度々、接触を図る機会を窺う。サイモンは施設暮らしの母に呼びつけられ、話し相手になるものの、素っ気なくされる。施設側に料金の改定を告げられ、サイモンは全財産を支払いに回す事を余儀なくされる。

夜、アパートに帰宅したサイモンは、向かいの部屋に住むハナの様子を望遠鏡で覗き見する。サイモンは、ハナが寂しそうに小さな紙に絵を描いては破り捨てる様子を見守り、ハナがダストシューターに捨てた紙くずを、ゴミ捨て場まで拾い集めに行く。サイモンは部屋に戻ると、絵を修復する。物音がした後、サイモンは向かいのアパートを見やると、双眼鏡でこちらを眺める男を見つける。男が手を振り、サイモンもまた手を振り返すと、男はそのまま身投げして死ぬ。サイモンは駆けつけた警察に事情を話し終えると、そこへハナがやってくる。

サイモンはハナと共に馴染みのダイナーに入る。ハナは飛び降りた男を知っているとサイモンに明かす。男がハナに付き纏った挙句、真上の部屋に住むストーカーだった事が判ると、憤慨したハナは男を詰問する。「君に恋した」と言う男に、ハナが付き纏わぬ様に命じた直後に男は自殺を図ったという。ハナはピアスを開けた事をサイモンに明かすと、サイモンに母から電話が入り、その間にハナは、好きな曲をかける様にと、メッセージと硬貨を残し帰宅する。気を良くしたサイモンは、自室のテレビを売った金で、ハナの為にピアスを買う。

翌日、社員強制参加の大佐の会が催され、サイモンも会場に訪れるが、受付で未登録を告げられ、閉め出される。サイモンは隙を見て裏口から会場に忍び込み、ハナの元に向かおうとするが、警備員に見つかり、強引に連れ出される。アパートに戻ったサイモンは、自分と瓜二つの男が向かいのアパートに入るのを目撃し、その男がハナの真上の部屋に住んでいる事を知る。

翌日、サイモンはエレベータでハナと居合わせ、ピアスを渡そうとするが尻込みする。エレベータが故障し、蹴りつけたサイモンは、業務課に呼び出しを受け、社員証カードが無効となり、新たなカードが届くまで数週間かかると告げられる。その直後、サイモンと同じ部署に新人が紹介される。自分と瓜二つのその男、ジェームズ・サイモンの出現にサイモンは卒倒する。サイモンは、社内の人間が自分とジェームズの容姿が同一だと気付かない事に困惑する。

サイモンは帰路でジェームズと鉢合わせとなり、一緒にダイナーに入る。ジェームズはサイモンとは正反対の自信家で傲岸不遜な性格を露呈する。その足でバーに寄った帰り道、サイモンは想っている女がおり、彼女の孤独を知っていながら、普通に話しかけられないと打ち明け、自分の能力の無さを嘆くと、自分が本物じゃないと呟く。サイモンは眠り込んだジェームズを自室に泊める。

それ以降、ジェームズはサイモンの手柄を横取りし、パパドプロスに高く評価される。更にジェームズは言葉巧みにメラニーを手懐けると、ハナの誘惑をも始める。サイモンはハナにジェームズの事で相談を持ちかけられ、気持ちを代わりに伝えて欲しいと頼まれる。サイモンはジェームズの代役としてハナとデートする様に仕向けられるが、ハナはサイモンに憤慨し、結局、ジェームズとハナの距離が縮まる。

翌日、サイモンはハナとジェームズの進展ぶりを気にかける。一方、パパドプロスに認められたジェームズは大佐との対面を果たす。施設の母を訪ねたサイモンは、相部屋の老女から母に引導を渡す様にナイフを手渡され、それを持ち帰る。その夜、サイモンはジェームズがメラニーを部屋に連れ込むのを目撃し、電話でジェームズを騙ってハナを部屋に呼び出す。ハナはジェームズの部屋を訪ねるも帰され、悲嘆に暮れる。そんなハナの姿を見て、サイモンは涙する。

翌日、サイモンはジェームズを呼び出し、ハナと会わず、またメラニーを弄ばぬ様に命じる。しかしジェームズはメラニーと共に撮った写真を突き付け、更に部長に昇進した事を明かすと、サイモンとの立場の違いを見せつける。ジェームズはメラニーとの逢瀬に、サイモンの部屋を使わせる様に要求し、サイモンは部屋の鍵を渡す。ジェームズが浮気していると察知したハナはサイモンに問い質し、サイモンの部屋からジェームズが女を連れ込む様子を確認させる様に請う。サイモンが考え過ぎだと諭すと、憤ったハナに罵られる。その夜、サイモンはハナの絵を回収している現場を、ハナ自身に見つかる。その時、ハナはジェームズがウェイトレスを連れ込む瞬間を目撃する。部屋に戻ったサイモンは、ジェームズにナイフを首元に突きつけられ、追い出される。

翌日、業務課に呼び出されたサイモンは、システムから自分の記録が削除されている事を伝えられる。更にその後、サイモンはパパドプロスにメラニーに手を出した事を詰られ、その傍らでジェームズはサイモンが異常だと告げる。サイモンはジェームズが自分の顔を盗んだと直訴するが、社員は誰も信用せず、サイモンは激昂して暴れる。会社から追い出されたサイモンは、遺書を残して、自殺を決意する。偶然にもサイモンは、望遠鏡でハナが投薬自殺を図った事を知る。搬送先の病院に駆けつけたサイモンは、医師からハナが流産した事を伝えられる。

サイモンは退院したハナを部屋まで送るが、ハナは死を希望しながら救出された事を恨み、自分の代わりに自殺する様にサイモンに告げる。その直後、ハナはサイモンから借りたジャケットから贈り物のピアスと、これまでハナが描いては破り捨ててきた絵をスクラップしたノートを見つけ、サイモンの気持ちに気付く。

一方、帰宅したサイモンは母の訃報を聞き、深夜に行われる葬儀に駆け付ける。そこには既にジェームズが参列しており、憤慨したサイモンはジェームズを殴りつけるが、神父に撃退される。昏倒したサイモンが目を覚ますと、既に葬儀が終わっており、サイモンはジェームズに殴りつけた部位が自分も負傷している事を知る。

サイモンはアパートに戻ると、ハナの元へ直行し、別れを告げると、自室で眠るジェームズを手錠でベッドに拘束し、ジェームズの部屋に向かう。サイモンは自傷で連動させてジェームズを傷つけ、目覚めさせると、かつての男の様にジェームズに手を振り、投身自殺を図る。サイモンの元へハナが駆け付け、寄り添うと、救急車が到着する。一方、ジェームズはサイモンの部屋で息絶える。搬送中の車内にハナと乗り合わせた大佐が「君の様な人は少ない」と告げる。サイモンは「特殊な存在になりたい」と呟く。

 

 

一度映画館で観てきたのだが、面白い作品は何度観てもやはり面白い。原作がドストエフスキーということで、未読だから比較して何がどう違うかとかその辺は分からないが、ちょっと難解で掴みどころの無い感じはロシア文学の香りを漂わせているかなと。この浮世離れした奇天烈でディストピアンな世界観に、坂本九上を向いて歩こう」やジャッキー吉川ブルーコメッツ「ブルー・シャトウ」、「草原の輝き」といった昭和の歌謡曲が挿入され、なぜか逆に異国情緒を増す効果を上げているのがなんとも趣深い。更に、イケメンなのにナードな役が似合うジェシー・アイゼンバーグと、ツンデレテイストなミア・ワシコウスカの演技が痛快で、これらを絶妙なバランス感覚で纏め上げている監督のセンスに感服する。

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