クリス・カーター製作「X-ファイル 2016 (2)」("The X-Files season 10" : 2016)[DVD]
14年の年月を経てXファイル課に復帰したモルダーとスカリーが、再び超常現象を示唆する難事件に挑む様を描くSFサスペンス作品。
第3話「トカゲ男の憂鬱」(3 : Mulder and Scully Meet the Were-Monster)
Xファイル課が再開されたものの、モルダーは過去に自分達が追ってきた怪物絡みの事件の多くが、閉鎖中に科学的に解明されてしまった事を知って嘆く。そんな折、オレゴン州シャワンの森でXファイルに相応しい不可解な殺人事件が発生し、モルダーとスカリーは現場に赴く。
事件当夜、現場に居合わせた中年カップルは、動物管理局の男が人型のトカゲ然とした怪物に襲われるのを目撃して大騒ぎし、その傍で首元を咬み千切られた男の死体が見つかったと主張する。管理局の男は難を逃れるも、背後から襲われた為に大トカゲを見ていないと証言する。地元警察により、現場から程近い場所で新たに三人の死体が、皆、首元に同じ傷痕があり、一人はなぜか裸の状態で見つかる。モルダーは野生動物の仕業だと悟り、落胆するが、スカリーは殺人事件である以上、誰の仕業にしろ、解決は有意義だと諭す。
その夜、トランスジェンダーの男が怪物と遭遇するも、バッグで殴りつけて撃退する。男は駆け付けたモルダー達に対し、怪物が後頭部に何本も角を有し、白ブリーフを履いていたと証言する。間もなく、二人は子犬を探しているという動物管理局の男と遭遇する。その直後に二人は怪物の鳴き声を聞き、その近くで新たに別の男の死体を発見する。不審人物を追うモルダーはトカゲ男と鉢合わせになり、辛うじて写真の撮影に成功する。二人はトカゲ男が屋外の簡易トイレに逃げ込んだのを確認し、ドアを開けるが、そこには用を足す中年の男しかおらず、困惑する。しかし、その男こそトカゲ男であり、二人が去った後に行方をくらます。
モルダーはトカゲ男が目玉から血を飛ばしてきたと主張するが、スカリーは直前の被害者の血だと推測する。モルダーはツノトカゲの敵に血を浴びせて身を守るという習性を示すが、スカリーは検死の末に、被害者の咬み痕が人間の歯によるものだった事を明かす。
その夜、二人は町のモーテルに宿泊する。モルダーは管理人が「怪物!」と喚く声で目を覚まし、事情を聴きに行く。管理人は客に滞納している宿泊料金を請求しに行った際に揉めただけだと弁解する。モルダーはその客の部屋に立ち入ると、荒らされた様子を確認すると共に、落ちていた抗精神薬を回収する。その際、モルダーは管理人の部屋から全居室に隠し通路が繋がっており、それぞれに覗き穴が設けられている事を発見する。モルダーは管理人に捜査官である事を明かすと、荒れた部屋で何を見たのか問い質す。管理人は客の男が独り言を喚き散らし、部屋を荒らした後、トカゲ男に変身するのを目撃した為に助けを求めると、男が逃走した事を明かし、その男がモルダーの示したトカゲ男の人相図と、簡易トイレで撮影した写真の中年男の双方に一致する事を認める。
それを受け、モルダーはトカゲ男が怪物と人間との間で変身を繰り返しているのだと主張する。スカリーは疑義を呈すが、モルダーは新種の生物か、あるいは人工的に創り出されたのか、目的はどうであれ男が怪物に間違いは無く、着ていた服は被害者の一人から奪った物と同じだと説く。
翌日、モルダーは男の足取りを追うべく、抗精神薬を処方した精神科医を訪ねる。医師は恐ろしい人喰い大トカゲに関する寓意を語り、内なる怪物を認めるよりも怪物の存在を信じる方が楽だと説くと、その男ガイが月夜にトカゲ男に変身するという妄想を抱いていた為に、抗精神薬を処方したと証言する。更に医師は、死ねば永遠に解放されると思い出して心が安らぐという根拠から、幻覚が現れそうになったら墓地へ散歩に行く様にガイに勧めた事を明かす。
一方、スカリーは町の携帯ショップで働いているガイを発見し、話しかけるが、ガイは突然暴れ出した末に、辞めると叫んで裏口から逃走する。駆け付けたモルダーは墓地へ向かい、そこでガイを発見する。モルダーは思いつめる様子のガイに、素性を伏せて秘密を打ち明ける様に促す。ガイは意味不明な人生を終わりにしたいと吐露するや否や、所持していた瓶を割ってモルダーに襲いかかるが、モルダーがそれを奪うと逆に殺す様に仕向ける。モルダーは助けたいのだと諭すが、ガイはそれなら殺して欲しいと望む。モルダーはその前に全てを話す様に求め、ガイは事の経緯を語り始める。
事件当夜、トカゲ姿のガイは森の中で寛いでいたところ、男が別の男を咬み殺すのを目撃し、それを止めるべく威嚇したが、その男に逆に噛まれてしまった。翌朝、目覚めたガイは身も心も人間に変化していた。同時にガイは、初めて意識が芽生えた事で体を覆いたくなり、転がっていた死体から服を奪った。服を着たガイは仕事を探す衝動に駆られ、携帯ショップで即座に店員の職を得ると、嘘を付く能力で業務を難なくやり過ごした。その夜、ガイはモーテルで人間の食事を取り、寛いでいたが、突然、トカゲに戻った為に歓喜した。ところが翌朝にはガイは再び人間に戻ってしまった。ガイは仕事に嫌気が指すも、さりとて辞める勇気も無く、行き詰まりを感じて精神科医を訪ねた。処方された薬を飲んだガイは大胆になり、子犬を飼うと、幸せを感じて、夜通しその子犬と遊んだ。しかし、翌日、ガイが仕事から戻ると、子犬は部屋から逃げていた。ガイは子犬を一晩中探すも見つからず、人生が無意味だと悲嘆した。その時、ガイの前に自分を咬んで人間に変えた男が現れた。ガイは復讐心に駆られると、忍び寄って男を襲おうと企てたが、逆にその男が別の男を襲っているのを目の当たりにした。ガイは恐怖で竦んでいる内に月が上り、トカゲの姿に戻ると、人間の残忍さに嫌気が差し、服を脱ぎ捨て、森へ帰る事を決意した。そこでトランスジェンダーの男と遭遇し、撃退された。その後、モルダーに追われ、逃げ込んだ簡易トイレで写真を撮られた。ガイは夜なのに人間に戻っていた理由は分からなかったが、その後、モーテルの管理人と一悶着起こした後に逃げ出した。翌朝、ガイが出勤すると、そこにスカリーが現れたのだった。
モルダーは余りに荒唐無稽な話に疑義を呈す。ガイは自分を救って欲しいと訴え、モルダーに掴みかかり、その際にFBIの身分証を見つける。ガイはモルダーが自分を助ける気など無いと悟ると憤慨し、モルダーを罵って墓地から走り去る。意気消沈したモルダーは、その場で持参した酒を開けると、禁酒の断りを破って泥酔する。そこへスカリーから連絡が入ると、モルダーはトカゲ男の話を信じた自分が馬鹿だったと嘆く。スカリーは動物管理局の男に話を聞きに来た事を伝える。スカリーは保護された咬み癖のある子犬の相手をしている最中、突然、管理局の男に背後から襲われるが、容易く退け、男を制圧する。そこへモルダーが警察の応援と共に駆け付ける。
スカリーは犯人が普通の人間だったと主張すると、被害者の検死報告から死因が絞殺だった事を知り、男が置いていった網を調べたところ、被害者の血が出た為に決め打ちで管理局に来た事を明かす。男は子供の頃から小動物を痛めつけたい衝動があったと供述する。モルダーはガイの話が本当だと悟ると、森へ戻り、そこでガイと再会する。モルダーはガイに疑いが晴れた事を伝える。ガイはその場で服を脱ぎ捨てると、1万年に及ぶ冬眠に入る意向を示す。ガイは大変な思いをしたが、会えて良かったと告げると、モルダーと握手し、目の前でトカゲ男に変身する。ガイは森の奥へ姿を消し、モルダーは「こちらこそ」と呟く。
第4話「バンドエイド・ノーズ・マン」(4 : Home Again)
フィラデルフィア西部のホームレス街。夜、住宅都市開発省の職員カトラーは、移転事業に伴う用地確保の為に、警察を動員した強制立ち退きに着手し、ホームレス達にバックス郡の旧病院への移送・収容を通告する。カトラーが省出張所に引き上げると、建物の前にゴミ収集車が停まり、その中から巨躯の男が現れる。男はオフィスに押し入ると、カトラーを惨殺した後、収集車のゴミの中に姿を消し、収集車は走り去る。
翌日、モルダーとスカリーが現場へ捜査に赴く。二人は犯人の足跡に指紋が無く、被害者が四つ裂きに引きちぎられて殺されている事を知る。その時、スカリーは兄ビルから連絡を受け、母マーガレットが心臓発作を起こしてDC内の病院に搬送された事を知る。モルダーはスカリーに病院へ行く様に促し、自らは捜査を継続する。
モルダーは高所にある防犯カメラが全て動かされ、また長身のカトラーが相手を見上げていた事から、犯人が相当の巨躯だと悟る。また建物の前の看板に描かれた男の絵が、カトラー殺害時には無かった事が判明し、モルダーはその絵を早朝に描いた者が何かを目撃している可能性を指摘する。更にモルダーは現場の傍で粘液の付着したバンドエイドを回収する。一方、スカリーはマーガレットが搬送されたベアトゥス医療センターへ駆け付ける。ナースはマーガレットが一時的に意識を取り戻した際に、チャーリーに会いたいと訴えていた事を明かす。スカリーはマーガレットが自分やビルでは無く、末っ子の弟で音信不通のチャーリーに会いたがった理由を図りかねる。
モルダーはカトラーと共に再開発を担うランドリーと、バックス郡教育長のハフが啀み合っている場に立ち会う。ランドリーはホームレスをハフの学区内の使われていない旧病院に移送しようとしている一方、ハフはホームレスに同情しながらも、旧病院が高校の近所であり、ホームレスの中に殺人犯が潜んでいる事を危惧し、移送に猛然と反対する。モルダーはホームレスの味方がいないのか問う。その時、ホームレスの一人が「バンドエイド・ノーズ・マン」(BNM)と口にする。モルダーは看板の絵が忽然と消えている事に気付く。一方、スカリーはマーガレットの私物入れの中に、ペンダントヘッドにされた関知せぬ硬貨を見つける。スカリーはセンターに向かっているというビルからの連絡を受けると、かつてマーガレットが希望していた通り、延命措置を取る意向を伝える。しかし、ナースがマーガレットの生前の意思を確認したところ、延命の希望が昨年変更されていた事が判明する。
モルダーはラボに持ち込んだバンドエイドから、有機物も無機物も何一つ検出されなかった事を知る。その頃、看板の絵を転売目的で盗んだ男二人が、収集車から現れたBNMに惨殺される。看板からは男の絵が消え、「トラッシュマン」のサインのみが残される。一方、スカリーは法的にマーガレットの意思を尊重する必要に迫られ、抜管の選択をする事に苦悩する。そこへモルダーが捜査を中断して駆け付ける。
ランドリーはホームレス達をバスに乗せ、旧病院に移送する作業に着手するが、ハフは裁判所の差止命令を突き付け、それを制止する。モルダーはホームレス達が絵の男を守護者だと思っている事から、絵の作者と思しきトラッシュマンが移転事業からホームレス達を守る為に関係者を襲っているのだという見立てと共に、捜査の経緯をスカリーに伝える。スカリーはマーガレットがチャーリーに会いたがり、内緒で延命を拒否した意図、硬貨の真意などの理解に苦しみ、途方に暮れる内に、マーガレットの抜管が行われる。
ハフが帰宅して間もなく、収集車がやってくる。BNMはハフを惨殺すると、収集車と共に姿を消す。スカリーとモルダーはマーガレットの予後を見守る。その時、チャーリーがビルから事情を聞いてスカリーに連絡してくる。チャーリーはスカリーに促され、電話越しにマーガレットに話しかける。するとマーガレットは覚醒し、モルダーにウィリアムについて語りかけ、息を引き取る。スカリーはその真意を図りかね、困惑する。マーガレットが臓器提供の為に搬出されると、スカリーは悲しみを振り払うべく、捜査へ復帰する意向を示す。
トラッシュマンのサインを分析した結果、使用されたのが特殊な塗料であり、近隣で扱っている店が一軒だけだと判明する。二人は店に張り込み、その塗料を買い求めた男を追跡し、町外れの廃ビルに辿り着く。その男は、虐げられ、無視されるホームレス達の声を、自らのステンシルアートを通して代弁したのであり、殺人を犯したのは作品だと主張する。男はBNMを実体化した思念体と称し、ホームレスを虐げる奴らを脅すという願いを込めて作成した粘土の人形が、いつしか自分の意思を持ち始め、殺人を使命と考える様になったのだと説く。スカリーは責任が作者にあり、見て見ぬふりをするなら虐げている連中と同じだと説く。モルダーは最後に狙われるのがランドリーだと確信する。
その夜、裁判所の差止命令が解除され、ランドリーはホームレス達を旧病院に移送する。その直後にランドリーの前にBNMが現れる。間もなくモルダー達は旧病院に駆け付けるが、一足遅く、ランドリーの惨殺体を発見する。BNMは忽然と姿を消し、トラッシュマンも廃ビルから立ち去る。
後日、スカリーはマーガレットがチャーリーに会いたがったのは、長らく疎遠でありながらも、親の責任として死ぬ前に安否を確認したかったからであり、モルダーに対して同じ様にウィリアムに責任を持ち、会えなくとも無事を確認する様に告げたのだと悟り、モルダーに胸中を吐露する。スカリーはウィリアムを守る為に養子に出したものの、ウィリアムが自分達に思いを馳せたりしないか、心細い思いをしていないか、捨てられたと思っていないかと心配し、自分達はウィリアムを決してゴミの様に疎かにしないと主張する。モルダーはスカリーの心情を慮り、抱き寄せる。